菊地奈緒子(Naoko Kikuchi) 琴演奏家

菊地奈緒子プロフィール

仙台市生まれ。幼少より祖母、母より手ほどきを受ける。沢井忠夫師、沢井一恵師、梅岡友紀子師、地歌三弦を横田延子師に師事。


上智大学外国語学部ロシア語学科在学中より『Sawai Kazue 箏アンサンブル』メンバーとして欧州、南米などワールドツアーに参加。文化庁新進芸術家海外留学制度研修生として、ドイツ、フランクフルトのIEMA(インターナショナルアンサンブルモデルンアカデミー)に在籍。

 

現代音楽のアンサンブルを研修しレパートリーの幅を広げる。ソリスト、室内楽奏者として各国の芸術祭に参加。東欧、西欧、アメリカ、中東など、演奏を行なった国は30カ国以上にのぼる。

 

様々なジャンルの演奏家、作曲家、アーティストと共に共演、新作の初演、朗読劇での演奏や、演劇への楽曲提供、ダンスとのコラボレートなど、様々な演奏活動を展開。同時進行で箏の持つ器楽的特色を強く持つ古典曲の習得や、様々な分野からも幅広く、技術の習得、音楽面の吸収を余念なく研摩し続けている。


現在フランクフルトに在住。ヨーロッパの音楽家、芸術家と共に共同作業をする事で、箏の新しい技術の開拓、箏音楽の発展を視野に入れた創造的な活動に取り組んでいる。同時に広く箏を知ってもらうためのレクチャーコンサートや日本文化紹介等の演奏活動もしている。

 

長谷検校記念全国邦楽コンクール優秀賞受賞。生田流箏曲清絃会家元補佐*(家元足達清賀、副家元市川慎)秋田に本部を置く(創立115周年の会派)ベルリンに拠点を置くアジアの民族楽器と西洋楽器のアンサンブル、アジアンアートアンサンブル、中国琴、カヤグム、箏のアンサンブルIIIz+(3つのツィターの意)メンバー。

 

オフィシャルウェブサイト http://www.naokokikuchi.com/

 

主な活動・受賞履歴

1993年 仙台市主催新人現代音楽作曲家、演奏家によるオーディション『ニューサウンドパル』演奏部門入選、コンサート出演。NHK邦楽技能者育成会第39期卒業

1994年 ジャズべーシスト斉藤徹ユニット『Palam-風-』メンバーとして東京近郊のライブハウスで活動。『横浜ジャズプロムナードフェスティバル』参加。沢井箏曲院若手演奏家によるアンサンブルグループ『箏衛門』結成。

1995年 舞踏家土方巽創設『アスベスト館』ポーランド公演に音楽担当として参加。ポーランド人の彫刻家マグダレーナ アバカノビッチ総監督による野外公演を行う。

1996年 尺八演奏家中村明一ユニット『虚空』メンバ-として活動。

ニュージーランド。クライストチャーチ市ジャパンフェスティバル参加。

北九州国際フェスティバル参加。『Sawai Kazue箏アンサンブル』メンバーとして仏ミュルーズ市にて演奏。

1997年 国立劇場主催『現代日本音楽の展開』当劇場委嘱西村朗新作曲により出演。北九州国際フェスティバル参加。仙台市においてソロリサイタルを催す。

1998年 国際交流基金派遣によりホンデュラス、アルゼンチン公演参加。

1999年 中国国際音楽会議主催『万里の長城杯』アンサンブルの部2位受賞。NHK邦楽オーディション合格。NHKFM『邦楽のひととき』出演。

2000年 平成12年度文化庁芸術インターンシップ研修生に選ばれる。

日本音楽の音階論、作曲を本間雅夫氏、リズム演習を遠藤正樹氏、能の謡、拍子論を高橋保氏の下で研修する。箏衛門ファーストCD(U.S.A. Sparkling Beatnikレーベル)リリース。

2003年 市川慎と共に委嘱新作曲のデュオリサイタル『Duo for Duo』を東京、仙台、秋田で催す。

2004年 ホエールトーンオペラ 第一 幕出演(えずこほーる)

2005年 トーキョーワンダーサイト On Site Labo Collaboration series vol.1「伝統と未来」出演。インターナショナル・アンサンブルモデルンアカデミー参加。17 CROSS 25 ~菊地奈緒子/山本亜美17絃箏・25絃箏デュオ~(東京の夏2005音楽祭参加公演)。清絃会110周年記念演奏会出演。菊地奈緒子箏ソロリサイタル 「こえ・うた・響き」開催

2006年 『市川慎・菊地奈緒子・小湊昭尚トリオ』 ルーマニア・ブルガリア・セルビア・モンテネグロツアーを各国大使館主催。国際交流基金助成事業により行う。ホエールトーンオペラ全幕公演。長谷検校記念全国邦楽コンクール優秀賞受賞。台北市に於いて『第四回 アジア舞台芸術祭』に東京都派遣団として出演。

2007年 港区政60周年記念イベント4 』「港区ゆかりの作家 志賀直哉作「赤西蛎太の恋」朗読劇」宮城聰演出の下演奏。

2008年 『箏、尺八、ギタークインテット』セルビア・ボスニア ヘルツェゴビナ・クロアチア ツアーGuitar Art Festival 9th Sarajevo Winterfestival等、各国フェスティバルに参加。

2009年 「アジアゴ音楽祭(イタリア)」参加。「クロスサウンドフェスティバル(アラスカ)」参加。在イエメン大使館の招きにより「イエメン日本週間」にて演奏。

2010年 ニュルンベルグ室内楽フェスティバル オペラ”schau nicht zurück Orfeo”ニュルンベルグオーケストラと共演。

2011年 リコーダー奏者、テレサ マティアスと共にポルトガル公演。(Classica de Cacela, Museum do Oriente)ルーアトリエンナーレ出演。

2012年 マドリード公演。フレディ マーキュリー復刻アルバム”バルセロナ”にて演奏。ソルボンヌ大学のMarc Battier教授の電子音楽作品を演奏

2013年 衣笠貞之助監督 川端康成脚本 無声映画「狂った一頁」にジーンコールマン作曲の音楽を演奏する(ウィーン、ベルリン)。

 

 

 

菊池奈緒子さんにインタビュー

Q. 菊地さんは、小さいお子さんを連れてドイツでの活動を開始されましたが、その行動に駆り立てたパワーはどこからきているんですか?
A. 私の中では、家族、演奏活動や全ての事が同じラインに乗っている人生なので、何も特別な事はなく、演奏活動のなかでドイツでやるべき事を見つけ、子供と渡独し共に生活をする事は極普通の感覚でした。

 

確 かにその方法を見つけなければ行けないので、情報を集めて、足を使って探し、最終的には色々な人が助けてくれた事で成り立った事がたくさんあります。パ ワーと言うよりも、何事も導いてくれたり、光を当ててくれたり、助け舟を出してくれたりする人々に出会えた幸運でしょうか。

Q. お琴は独自の縦譜と聞きますが、五線譜の音楽表現とは違った世界なのでしょうか。
A. 古 典は特に本来楽譜から成っている音楽ではないので、楽譜自体はそれを習う生徒達が記譜したものと考えています。ですので、流派によって基本は一緒でも、記 譜が違っており、少しずつ違う奏法であったりします。特に間の取り方、フレーズの取り方はそれぞれ独特なので、楽譜だけで演奏するのはほぼ無理な事だと思 います。

 

やはり古典の世界は習うより慣れろです。また近現代の曲でも、縦譜(縦に書かれた数字譜面)で演奏することもあります。五 線譜との大きな違いは、縦譜で演奏に慣れた私たちは、絃の位置と音、その動き、フレーズを頭や身体にしみ込ませながら演奏していく事、半ば耳を伴った一つ 一つの運動を覚えていく事です。なぜなら箏の場合同じ絃でも調弦によって全く違った音(ピッチ)になるので、五線譜のように絶対音で弾く場所や運動が決ま る訳ではないからです。


今は五線譜に書かれた箏の作品も多く、それに取り組む時に必要なのは拍感(パルス)をしっかり感じながら演奏する事です。箏古典曲の間の感覚との差は大きいです(時に古典曲では拍感を敢えて持たずに演奏するのが適切な場面が多々あります)。


なんと言うか、私にとって縦譜は日本語、五線譜は外国語と言うのでしょうか。でも全てを日本語に翻訳しても逆にその意味を失ってしまうので、敢えて翻訳せずその外国語の中での思考を使って演奏しています。
特に洋楽器とのアンサンブルの時には必須なことですね。

Q. 西洋音楽の世界で琴・ソリストとしての活動。どういった苦労がありますか?
A. ソロでレパートリーを演奏する事もありますが、箏演奏家は確かに一人でもアンサンブルの中で演奏する事も多く、また作曲家の方と新作に取り組む事など、基本全てが共同作業です。モデルンアカデミーで実感したのは、演奏会は演奏家だけでなく、作曲家、事務の方、ステージマネージャー、エンジニアと創り上げていくもので、そこには支えられるや支えるなど、上下関係は無いと言う事です。

 

もちろん、当日は聴衆の方々も大事な一人です。だから、あまり苦労していると言うより、様々考えや価値観は違えど、一緒に頑張れる人がいればそれで満足です。それでも敢えて挙げるとすると、作曲家に楽器、箏演奏家を良く理解してもらうことと、楽器が大きいので運搬が大変な事でしょうか...


Q. 今後の活動の目標はなんでしょうか。
A. 沢山の優れた芸術家に出会い、良い作品に出会って、演奏を高めていく事が出来れば嬉しいです。新たなプロジェクトに係わっていくのは本当にワクワクします。箏コンチェルトなど大きな編成のものにも取り組んでみたいですし、また学校公演等、子供達に箏を知ってもらう様な活動もしていこうと考えています。


Q. 読者の皆さんへ、琴の魅力を伝えてください。
A. 1300年以上の長い歴史の中、楽器そのものの形を変えずとも、人々の音楽の中で様々な音楽を奏でてきた、音の幅の広さ、豊かさ、様々な可能性を秘めた楽器だと思っています。演奏される音楽のジャンルは本当に多く、箏が様々な場所で演奏されているのは、しなやかでもたくましい日本人らしい力がある様に思います。


23.Jun 13 MN