岡村 知由紀 ソプラノ歌手

Chiyuki Okamura

高知県出身。高知大学大学院音楽科修了。2005年北ドイツ・ハンブルクへ渡り、2007年よりブレーメン州立芸術大学古楽科で学ぶ。これまでに声楽を小原浄二、クヌート・ショッホ、ハリー・ファン デア カンプ、クレメンス・レシュマンらの各氏に師事。

 

高知大在学中より、J.S.バッハを中心としたバロック期の声楽作品、ロマン派のドイツ歌曲に力を入れ始める。2008年シュレスヴィヒ・ホル シュタイン夏季音楽祭において、ヘンデルのオラトリオ「アレキサンダー饗宴」のソリストに抜擢され、翌年hänsslerより同作品のCDが発売。



その後も数々の作品でソリストを務める。コンスタンツ・フィルハーモニーとJ.S.バッハ「クリスマスオラトリオ」を、アンサンブル・オーケストラ ル ド パリとフォーレ「レクイエム」(試聴はこちら Pie Jesuのソロ CD/hämsler)を共演。2011年4月ワルシャワで開催されたベートーベン・フェスティバルでは、J.S.バッハ「ヨハネ受難曲」を歌い地元紙より絶賛を浴びる。2012年5月ボーデンゼー・ フェスティバルにて、ルネサンスのプログラムでソロを歌ったところ。

 

ヨーロッパだけでなく世界中で演奏活動を行う。北ドイツ放送合唱団、バッハ・コレギウム・ジャパン、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント(ベルギー)各メンバー。

 

まるで“天使のような”清らかな声質を持つ岡村さん。小さい頃より、ピアノを教える傍ら合唱団の指揮者を務める母の影響で、歌に親しんでいたそう。中学校 では合唱部に入るつもりが、入学式でブラスバンドの演奏に感動し吹奏楽の世界へ。吹奏楽の指揮者にあこがれ木管楽器で大学に入るも、副科で声楽を学び“や はり歌が好き”と強く認識。悩んだ末、大学4年で声楽へ転向したという。その後大好きなバッハの生まれ育った国を知りたいとドイツへ。

 

♪古楽の歌やご本人について、お話を伺いました。

 

クラシックの声楽でも古楽の歌とオペラでは、どのように違うか。古楽の歌い方ではヴィヴラートがあまり使われないそうだが、古楽はオペラの歌い方は存在しなかったか。
「オペラの歌い方」と聞いてよく想像される“オペラ歌手”の声とは、ヴェルディやワーグナーなどの作品で歌われる、ヴィヴラートのかかった豊かで力強い声でしょうか。

 

17世紀に最初のオペラが作曲されて以降、管弦楽器の音量の増加や、演奏会場の拡大に伴い、歌手も大きな声量と、ヴィヴラートのかかった豊かに響く声で歌 うことが主流となりました。しかし、現存する最古のオペラ作曲家モンテヴェルディの作品を、19世紀に主流となったヴィヴラートたっぷりの声で歌ってしま うと、作曲家の狙った効果を表現することはできません。

 

オペラに限らず、J.S.バッハのカンタータなどを、音高の触れ幅の広いビブラートのかかっ た声で大音量で歌ってしまうと、バッハの意図したであろう音楽的効果を壊してしまいます。人間の声はもともと自然なヴィヴラートがあるので、それまでも抑 制したノンビブラートは不自然ですが、作品の時代にあった歌唱の検証が大切だと思っています。


なるほど。私たちが“一般的に”知っているのは、ほんのほんの一部なのですね。バッハ以外に好きな作曲家は?
ルネサンス期の Barbara Strozzi という女性の作曲家です。

 

歌手として気を付けていることは?
日本語(特に土佐弁)を話すと発声が悪く、声がかれるので、できるだけ声帯に負担のかからないように話しています。


歌手は、体に厚みのある方がよい声が出るのか?
私個人の経験としては、おなかの支えがしっかりして、声が安定すると思います。下腹部に重心を感じられるかでしょうか。

一日にどのくらい歌う?
歌は一日2~3時間しか練習してはいけないと言われています。続けては2時間はだめ!休みをとりながら、全部あわせて2~3時間。

好きな歌手は?
スペインのソプラノ歌手 Nuria Rial です。

 

趣味は?
映画鑑賞。


ズバリ、自分の声が好きか。どうなっていきたいか。
答えは好きです。もちろん。ドラマティックな声で歌いたいなぁと思うこともあるけど、トランペットという楽器でもって、あぁ、チェロの音色で弾きたいなぁというものなので、自分の楽器でもって、いい音楽ができるよう精進します。ちなみに私の夢は、指揮者になることです。

観客に伝えたいと思っていることはどのようなこと?
一番心がけていることは、今、自分が歌っている歌詞の内容を、しっかりと届けるということでしょうか。声、テクニック、音程などはもちろん大事だけれど、 それらは全てサポートするものであって、どれが欠けても十分な表現にはならない。でも目的は、内容を理解してもらうこと。例えドイツ語やイタリア語が分か らない人でも、今この歌い手はこんな言葉をこんな感情歌っているのだ、と感じ取ってもらうために技術、音楽性ともに豊かにできるよう、日々の努力あるのみ ですね。

なかなか細かい音楽のお話も聞けましたが、実は彼女、本当の素顔は…“ウケ” を狙わないことはない面白キャラ。最後に今後の活動を伺うと、●活中なのだとか。歌と合わせて、応援しております!

岡村さん、ありがとうございました!

2012年7月取材
02.08.12 AY